No.54 その体調不良「グルテン」が原因かも?!

 

「グルテンフリーダイエット」が最近注目されています。パンやケーキ等の小麦粉を使用している食材を始め、
多くの加工食品にも含まれている一切の小麦を排除した食事法のことをいいます。セルビア出身の男子テニスプレーヤー、ノバク・ジョコビッチ選手がこの食事法を実践し、著書『ジョコビッチの生まれ変わる食事』で発表したことでも知られています。

 

グルテンは、小麦や大麦、ライ麦などに含まれるたんぱく質のことで、グリアジンとグルテニンという2種類のたんぱく質が水でこねられると出きるものです。その粘りや弾力はパンやうどんのもちもち食感のもとになります。他にもパスタやラーメン等の麺類、お好み焼きやピザ、カレーのルー等の加工食品、天ぷらやフライの衣、クッキー等の焼き菓子などの多くにも、グルテンは含まれています。それらを一切食べないのが「グルテンフリー(無し)」という食事法です。

 

最近の研究によるとグルテン過敏症と、各種の脳疾患(統合失調症、癇癪、双極性障害、うつ病、性欲減退、認知症さらに自閉症やADHDなど)との結びつきが証明されて来ています。これはグルテン過敏症と診断された人のみならず、普通にグルテンを消化できる人の場合でも当てはまります。

 

一般的に「小麦アレルギー」は、食べるとすぐに体中に発疹ができたり、顔が腫れたりするなど、小麦に含まれるたんぱく質に反応してアレルギー症状が出るものです。命を落としかねないアナフラキシーショックに陥る場合もあります。その小麦アレルギーとは別に、グルテンをとることで身体の不調を感じることをグルテン過敏症と呼ばれます。

 

また深刻な場合はセリアック病と呼ばれ、グルテンを摂取すると敵が侵入してきたと勘違いし、自らの小腸を傷つけてしまう自己免疫疾患と診断される場合もあります。それは小腸が傷つくことで栄養を吸収しにくくなり、消化不良や食欲不振だけでなく、重篤な病気の原因にもなるといわれます。

 

腸がグルテンに過剰反応したり、グルテンを消化しにくいグルテン不耐症(過敏症)の人は現在増えており、グルテン摂取により小腸の粘膜に問題が生じて炎症を起こし、必要な栄養素が十分に吸収されない、不要な毒素が体内に取り込まれる等により、慢性的な不調を引き起こす原因となっています。

 

さらに便秘や下痢などの消化器系のトラブル以外にも、頭痛、めまい、イライラ、関節痛、疲労感、やる気喪失、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、抑うつ症状など、不調は多岐に及びます。また、グルテンによる腸内の炎症が、副腎の疲労の原因となり、ひ疲れやすさややる気のなさを引き起こすともいわれています。

 

現代の私達の食生活はグルテンを多く含む穀物と炭水化物が中心であり、私達の祖先が食した野生の肉や魚、季節の植物や野菜や果実を中心とした食生活とは異なっています。脳疾患も含めた多くの疾患を引き起こすのが「炎症」である。グルテン、さらに言えば現代の高炭水化物の食事が脳に達する炎症反応の原因になっている事を、研究者たちは見出しつつあるのです。

 

穀物や炭水化物は、肉や魚、野菜などといった食べ物とは違う方法で、血糖値を上昇させ、炎症を起こす原因の一つとなっています。糖質やグルテンたっぷりの炭水化物による血糖の上昇は脳内で炎症の雪崩れ状態を生み出し、脳の神経組織の発生を妨げ、時間をかけて進行する認知症のリスクを高めます。更に炎症性の炭水化物がたっぷりで、脂肪が少ない食事は心の状態にも影響し、ADHD(注意欠如、多動性障害)、不安障害、トゥーレット症候群、精神的疾患、偏頭痛、さらには自閉症などの神経病のリスクを高めることにも繋がります。

 

より健康的な生活を得るために、グルテンを一定期間食べない、3から4週間を目安にグルテンフリー食を試してみると良いでしょう。何か思い当たる不調がある場合は、それが改善する可能性もあります。またグルテンフリーの実践で、体の不調がよくなり、やせやすい体質になる可能性もあるかも知れません。

 

さらに神経障害、精神障害、行動障害の症状の多くを改善するには、グルテンフリーを続けると同時に、DHAやプロバイオティクス(善玉菌)等の栄養機能食品、サプリメント等を食事に加えると良いでしょう。いま社会に、肥満やアルツハイマー病が蔓延しているのは、おそらく、多くの人々が炭水化物を多量に食し、一方で脂肪やコレステロールを避けているからでしょう。

 

以下は2006年に発表された、ADHDと診断された3歳から57歳までの被験者達を対象に6カ月グルテンフリーを続け、その「実施前」と「実施後」を比較した調査結果です。

 

「細かい点に注意しない」:36%減
「注意力を保てない」:12%減
「仕事を終えられない」:30%減
「簡単に気が散る」:46%減
「答えや引用文を唐突に言いだすことが多い」:11%減

 

多くの人々は簡単に薬物療法に頼りますが、この様にグルテンを除外し炭水化物を極力減らすだけで、素晴らしい結果が得られる可能性があります。ほんの数週間で気分が向上し、体重が減少し、エネルギーが高まり、更に脳の機能が高まり、体の生来の治癒機能も向上するでしょう。

 

現在薬を常用している人でも、多くの場合は食生活を替えるだけで問題は解決が可能です。最終的には薬を断ち、薬と縁のない生活がもたらす喜び、真に健康な状態を感じてみてはいかがでしょうか。そのためにも「グルテンフリー」の食生活は試してみる価値があると言えるでしょう。