《GMOって何だ?!》
遺伝子組み換え作物という名前は聞いたことがあるかと思います。英語ではGMO(Genetically Modified Organism)と呼ばれます。GMOは90年代の始めに栄養素の増強、干ばつにも強い、成長が早い、また大豆やコーン等の生産性の向上などを目的として始められました。そして20年以上経った現在、それらの目的とは程遠い現実が明らかになっています。
2009年に発行されたFailure to Yield: Evaluating the Performance of Genetically Modified Crops において、“GMOは政府からの巨額の資金をその開発に使っているにも関わらず、その生産性の向上という目的はほとんど達成されていない”と報告されています。
そして現在、GMOの安全性について心配する消費者の声が日に日に高くなっています。
GMOのひとつの方向性として、特定の除草剤に対する抵抗力を持つ品種の開発が成功しています。それは特定の除草剤を散布して雑草の駆除をする中、GMOの品種はこの除草剤の影響を全く受けずに成長して、作物を収穫することが出来るというものです。これは農家がその特定の除草剤のみを使用した場合に有効となります。
コーン、大豆、カノラ、コットン、アルファルファを含む幅広い農作物が、この除草剤対抗性GMO品種の開発に成功しています。この世界中で最も使用されている特定の除草剤というのが、グリフォサイト(Glyphosate)と呼ばれるものです。グリフォサイトは幅広い種類の雑草に対して効果があり、一般的には良く知られる「ラウンドアップ」という名の除草剤の主成分です。
グリフォサイトは2000年までアメリカのモンサント社だけがその製造権を持っていましたが、現在は中国メーカーを含むいくつかの会社により製造をされています。
現在、除草剤対抗性GMO品種の普及に伴い、グリフォサイトの使用量は劇的に拡大しています。EPA(アメリカ環境保護局)の2007年の報告では、年間180~185ミリオンパウンドのグリフォサイトがアメリカで使用されており、全除草剤使用量の50%近くになります。
これは既に非常に大きな数字ですが、現在は更に増えているものと考えられます。更に農業以外の
家庭用や業務用などを加えると、200ミリオンパウンド程度という非常に大きな数字となり、歴史上最も使用されている除草剤です。これだけの膨大な除草剤(毒物)が畑に散布されていれば、おのずとマイナスの効果が表れて来ていると、信頼出来る著名な科学者たちも警告をしています。
2015年現在、アメリカにおいてコーンは92%、大豆94%、コットン94%、ビート(砂糖ダイコン)95%はGMO作物だとUSDA(アメリカ農務省)は伝えています。
《健康に対するリスク》
現在子供に限らず多くの人々がアレルギーに悩まされています。実はGMO食品はそうでないものに比べて、食品アレルギーになり易いという報告があります。特に問題なのはGMO食品を食べてある種の食品にアレルギー反応を起こすようになると、GMOで無い食品を食べた場合にもアレルギー反応を起こす可能性が高くなるということです。
ラットなどの動物実験での結果では、GMO食品は肝臓機能、生殖機能、消化機能への影響、さらにガンの発生にも影響を与えるといわれています。恐ろしいのはGMOはそれを食べた世代だけでなく、その胎児にも伝わりその子供、子孫へも影響を与えるというのです。動物実験においてGMOの大豆をエサとして与えられたハムスターは、3世代目にして全く子供を作ることが出来なくなってしまったということです。
《環境に対するリスク》
GMOを栽培する農地では大量の除草剤が散布されます。それらは他の植物の生育を妨げるだけでなく、植物の成長に必要な栄養素を作り出す土中の微生物の成長にも影響を与えます。それにより土は痩せ、疲弊してしまうため、化学肥料無しでは作物が育たなくなります。
更に散布された除草剤は土だけでなく、水に溶けて川へ流れ出し海へも到達し、それらも汚染します。そこに住む多くの微生物、魚介類や動植物に対しても悪影響をもたらしているのです。
《農業と食に対するリスク》
GMOを栽培する農家では、その種は除草剤の販売元と同じ会社(モンサント社)からしか買うことは出来ません。そうすることで種と除草剤の両方がセットで販売出来、価格もコントロール出来るため、会社は多くの利益を得る事が出来ます。逆に農家は他の種を使うという選択が出来なくなり、完全に会社の支配化になってしまう訳です。
この様な状況は農業だけの問題では無く、それを食べる我々の食生活をも、一部の企業が支配することに繋がるため、アメリカや世界各地においてもGMO企業に反対をする人々が増えています。
《種の保存に対するリスク》
例えばGMO種のコーンの花から、その花粉がGMOで無い種の花に飛散し実を結んだ場合、GMOで無かった種もGMO化してしまうことが確認されています。その様にGMO種の栽培が拡大していった場合、その地域の既存の種の存続が危ぶまれています。
既に環境破壊や汚染、森林伐採や動植物の乱獲、戦争などの人類の活動により、多くの種が地球から絶滅しました。また商業農業に合わないからと見捨てられた各地域独特の種類の植物もあります。それらの失われつつある種、特に植物のためにシードバンクという施設が作られている程です。
《どう対策すれば良いか?》
まず日常レベルでは、オーガニック(GMOは使われていないはず)や、遺伝子組み換えで無い原材料を使用と明示された食品を選ぶようにすること。また多くの食品添加物はコーンや大豆などのGMO作物を原材料として使用されているので、加工食品を極力無くす、無添加の食品を選ぶようにすること。
特に日本ではしょう油や味噌、豆腐やおから、納豆に至るまで多くの食品が大豆より作られています。それらを選ぶときには「遺伝子組み換えで無い」と表示されたものを選ぶことが大切でしょう。更により多くの生鮮食品を選ぶことにより、健康一般に関しても良い影響があることでしょう。
また次のレベルとしては、これらのリスク情報を身近な人たちやコミュニティーにて共有、拡散をすることで、一般の人々のGMOに対する意識を向上させ、GMOの食品を避け、オーガニックやGMOを使用していない食品、無添加の食品を促進すること。その結果として生産者側や販売者側に対して、よりGMO以外の製品の提供を促進する事に繋がります。
更に政治レベルでGMO作物の日本国内での栽培が認可、促進されるような政策が出された場合は、それに市民レベルで各地域の代議士などの働きかけ、積極的にその政策を阻止するような活動も必要かも知れません。
GMO作物が世界中に拡散するにつれ、それが未来の世代に非常に大きな悪影響を与える可能性が高まっているといえます。これを他人事と思わず、まず自分自身、そして家族の健康や、子供の未来を守るためにも、今からこれらのリスクを意識をして積極的に対応する必要があるのではないでしょうか。
・・・続きは音声で。
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